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ホーム > 『日証金』について > コーポレートガバナンス > 当社の経営陣の選任とこれを展望した内部人材育成の考え方

当社の経営陣の選任とこれを展望した内部人材育成の考え方


当社は、証券金融会社として、金商法上の免許を受けて証券・金融市場のインフラを支えていくことを最も重要な使命と考えている。こうした使命を果たしていくため、高い財務の健全性維持と持続的な成長・中長期的な企業価値向上を実現する、機動性・柔軟性に富んだ特色あるユニークな企業を目指している。すなわち、小規模であるが故に可能なメリットを活かしたキラリと光る企業でありたいと考えている。
当社のこうした将来像の実現をより確かなものとしていくためには、当社が有する各事業ポートフォリオにおける事業推進面の努力が重要であることはもちろんであるが、これらを統括しリードしていく経営陣の選任と、それを可能とする内部人材の育成も、同様に重要である。
当社は以上の課題に積極的に取り組んでいるところであるが、2019 年に指名委員会等設置会社のガバナンス体制を敷いてから 4 年が経過し、2023 年度からは第 7 次中期経営計画がスタートするこのタイミングで、これまでの歩みを整理するとともに、今後の取組みに向けた考え方を、指名委員会・取締役会の実際の機能ぶりと合わせてお示しすることとしたい。

1. コーポレートガバナンス強化に関する当社の歩み

当社はもともと、監査役会設置会社の時代から、コーポレートガバナンスには強い関心を持ち積極的に取り組んできた歴史がある。例えば、2015 年度には女性の社外取締役を選任しているほか、2016 年度には任意の指名報酬委員会を設置し、委員会の過半数は社外取締役・社外監査役としていた。2018 年度には当時の業務執行取締役候補者の後継者計画を策定している。
こうした素地の上で当社は、2019 年度に指名委員会等設置会社に移行した。その狙いは、監督と執行を分離し、取締役会が中期経営計画などの経営方針の決定と監督を行い、代表執行役社長が統括する執行役等により形成される執行側が迅速な意思決定により経営方針の実現に邁進できる体制とすることにあった。そのため、当初から、取締役会議長、三委員会の委員長はすべて社外取締役、取締役の過半数は独立した社外取締役としていた。
指名委員会等設置会社としての基本的な枠組みの下で、当社はその実効性を高めるために様々な取組みを行ってきた。その中で特に重要なものは次のとおりである。

(1) 第 6 次中期経営計画および業績連動型役員報酬の策定・公表
第 6 次中期経営計画においては、セキュリティファイナンス業務、信託銀行業務の拡充強化を進め、収益源の多様化を推進することを軸とし、そのために貸借銘柄数・基礎収支額といった経営目標を設定した。また、これと整合的な業績連動型の役員報酬制度を導入した。

(2) 中期的な経営方針の策定・公表
2021 年度には、持続的成長と中長期的な企業価値向上に向けた一段のコミットメントと透明性の確保を図るため、中期的な経営方針を策定・公表した。
同方針においては、株主資本コストを 4%台半ばと推計したうえ、これを上回る ROE5%を 2025 年度までに達成することを経営目標として設定するともに、同年度まで累計で総還元性向 100%を目指すこととした。

(3) 取締役会の構成等についての考え方の策定・公表
国際化・DX 化等の環境変化の中で、中期的な経営方針の下での経営計画の策定や監督機能の一層の発揮に向け、スキルの複層化、監督と執行の人数面でのバランス、年齢構成・ジェンダーの多様化に配意して取締役会を構成していく方針を決定した(後述)。

(4) 執行役の選任についての考え方の策定・公表(後述)

(5) 事業ポートフォリオに関する基本的な考え方の策定・公表
当社グループは、貸借取引を核とするセキュリティファイナンス業務、有価証券運用業務、信託銀行業務、不動産賃貸業務を事業ポートフォリオとしている。

(6) サステナビリティへの基本的な考え方の策定・公表
当社グループは、証券・金融市場のインフラとして貸借取引業務をはじめとする様々なサービスを提供することによって、持続可能な社会の実現に向けて、同様な取組みを行う市場参加者への支援も含め、貢献していく方針としている。

(7) 取締役会事務局機能の強化
2021 年度に、コーポレートガバナンスの諸課題にスピード感をもって取り組むとともに、取締役会事務局機能の一層の充実を図る観点から、コーポレートガバナンス統括室を設置した。上記各種施策の指名・報酬委員会や取締役会審議において事務局機能を果たしている。

2. 経営陣の選任に関する考え方

当社は、代表執行役社長を中心とする経営陣に期待される役割は、当社の置かれる環境やその下での当社の事業ポートフォリオにより時代とともに変化するものであると考えている。そうした観点から、経営陣の選任や後継者計画は、事業ポートフォリオについての考え方に基づいて、次のように構成されている。

(1) 当社の目指す事業展開
当社の事業ポートフォリオにおいて、今後の企業価値向上に向けてとくに重要なものは、大別すると次の 2 つである。
● 貸借取引制度の運営
貸借取引業務は、金商法上の免許業務を営む当社の存立基盤、レーゾンデートルであり、今後とも、株式市場を取り巻く環境変化に適切に対応し、市場参加者の取引ニーズを適切に把握することにより、維持・強化を図っていく。
● セキュリティファイナンス、信託銀行業務
セキュリティファイナンス業務においては、貸借取引業務などで培った素地を活かし、国内・海外の市場参加者との取引拡充に積極的に対応している。具体的には、取引先、対象通貨・有価証券を拡大しており、このために PASLA(Pan Asia Securities Lending Association) 、
ISLA( International Securities Lending Association)などの国際的フォーラムを通じて国境を越えた有価証券貸借分野で積極的に活動している。また、信託銀行業務においても、保全信託等のいわゆる管理型信託を中心に、機動性・柔軟性を活かしてニッチ分野で高いシェアを得ることによって事業を拡大している。これらの業務には、当社の今後の収益性向上に大きな貢献を期待している。

(2) 事業ポートフォリオごとに重要視される資質
● 貸借取引制度
貸借取引制度は、広く証券会社が利用するものであるため、これを運営するための資質としては、公共的役割、公平性・中立性を重視している。その上で、今後は、この分野においても、環境変化や参加者ニーズへの柔軟な対応・新規掘り起こしが求められる。実際に 2023 年度には、こうした観点から貸借取引のあり方を中長期的な視点から考えるプロジェクトチームを発足する予定としている。
● セキュリティファイナンス等
セキュリティファイナンス業務や信託銀行業務も、幅広い市場参加者を相手方とする業務であることから、要求される資質も、証券・金融市場のインフラを支える当社が行うのにふさわしい性格のものと考えているが、証券・金融業務、市場、技術革新に関する知識・経験や、国際性がより一層重要な資質となる。

事業ポートフォリオごとに記載される資質

(3) 経営陣の構成についての考え方
こうした今後の事業展開や要求される資質を踏まえて、経営陣の構成について現状次のように整理している。
● 執行
執行役個々人の持ち味や強みを組み合わせ、上記の事業展開が効果的に進展するよう全体として求められる資質を備えた執行体制を構築していく。執行役陣全体の要求資質としては、公共的役割の十分な認識、市場全般についての広範な知見、各種法令への精通、専門性の高い当社業務に関する知見、国際性、経営管理・リスク管理・財務会計に関する高度な知見、環境変化に対する柔軟性、と整理している。
● 監督
上記執行を実効的に監督できるようスキルマトリックスを構成したうえで、スキルの複層化、年齢・ジェンダーの多様化に配慮しながら取締役陣を構成していく。近年では、金融界・産業界における企業経営の経験、法律等の専門的知見、DX や革新的ビジネスの知見を重視している。

(4) 代表執行役社長の後継者計画についての考え方
上記執行サイドの経営陣の後継者計画の中で、とりわけ重要な代表執行役社長の後継者計画については、次のように考えている。
● 代表執行役社長の要求資質
上記の執行役に求められる資質に加え、執行を統括して企業価値を向上させ、公共的役割を担う企業の代表者としての高い倫理観と整理している。
● 現状の現代表執行役社長の後継者計画の考え方
セキュリティファイナンス等を成長分野と位置付けて事業を展開する上記の方向感や、全体としての執行役陣の構成を踏まえたうえで、技術革新も含めた証券・金融業務に関する知識・経験をより重視し、公共部門出身者を含まない、中途採用者を含む内部人材を中心に検討している。

3. 経営陣の選任のプロセスと指名委員会・取締役会の果たしている役割

経営陣の選任は指名委員会・取締役会の最も重要な使命の一つであり、次のような経営陣の指名プロセスの中で、同委員会・取締役会は主体的・能動的に活動している。

(1) 選任のプロセス
① 基本的な定性的要件の審議・決定
「取締役会の構成についての考え方」、取締役のスキルマトリックス、「執行役の選任に関する考え方」等を指名委員会・取締役会で審議決定し、上記のように要求資質を整理している。
② ロングリストの議論
取締役であれば企業経営経験者、法律等の専門家、DXや革新的ビジネスに知見を有する者など、執行役であれば内部出身者、外部出身者(公共部門出身者、証券・金融界出身者といった母集団でロングリストの議論を行う。
③ ショートリストへの絞り込み、最終決定
その後指名委員会が有するバックグラウンドや識見、評価に基づいてショートリストへの絞り込みを行ったうえで、最終決定する。

(2) 上記プロセスにおける指名委員会の主体的・能動的関与
指名委員会は、日頃の取締役会における業務説明や懇談、視察に加え、執行側からの取締役会事前説明等の機会に情報収集を行っているほか、社外役員連絡会などで社外取締役間(取締役兼代表執行役社長を除く)で意見交換している。
そうした当社業務や候補者人材についての理解をベースに、監督側からの積極的な問題提起と、これに応える執行側の検討・提案の相互作用が実効的に行われた結果、上記 1.に挙げた各種の審議・決定がなされている。
例えば、現社長の後継者計画については、2023 年 1 月に現時点の方向感として中途採用者を含む内部人材から検討し、公共部門出身者を含めないとの方針を開示している。この点については、2022 年夏の時点で既に、指名委員会と執行部との間でインフォーマルな意見交換を行った際、指名委員会側から問題提起のあったものである。他方、執行部側においても、2021 年以降事業ポートフォリオに関する考え方や、これを踏まえた執行役の選任に関する考え方を整理する中で、同様の問題意識が芽生えていたところであり、基本的な認識において監督と執行の一致をみた。これを踏まえて代表執行役社長の後継者計画のあり方として議論を続け、2023 年 1 月に指名委員会・取締役会決議を経て開示した。
こうした案件も含め、重要案件については、①論点整理とフリーディスカッション、②素案についての議論、③決議案や開示のあり方についての審議、といった形で、監督側からも執行側に提案や論点提起を行いながら、数次にわたる議論を経て決定している。

選任のプロセス

4. 内部人材の育成方針

こうした経営陣の後継者計画の実効性を確保していく上では、その母集団となる少数ながらも厚みのある精鋭の内部人材を育成していくことがポイントとなる。当社としては、指名委員会・取締役会での議論も踏まえて内部人材の育成方針について次のように考えている。
(1) 基本的な考え方
事業展開の考え方に沿った組織変革力の向上に向けて、多様性の確保と専門性、主体性の強化を軸に、人材育成の強化と人材ポートフォリオの再構築に努め、少数ながらも層の厚みがあり、経営幹部を継続的に生み出していける体制を整える。この点は第 7 次中期経営計画においても重要事項と位置付けており、近く同計画における人材戦略を公表する予定である。

(2) 人材育成の方向性
人材育成は、事業ポートフォリオに即してビジネスラインごとに考える必要があると考えている。上記 2. (1)に記載したとおり、今後の当社の事業展開にとって重要と考えられる 2 分野については、それぞれ次のような人材が求められる。
① 貸借取引制度の運営
貸借取引制度の安定的な運営のため、法令・規程に沿って安定的かつ確実に事務処理を行う人材とともに、環境変化や市場参加者の取引ニーズの的確な把握と利用促進策の開発に対応できる人材。
② セキュリティファイナンス業務、信託銀行業務
新たな取引手法の開発や需要の掘り起こし、海外を含めた取引先の拡大やリレーションの構築に対応できる人材。

人材育成の方向性

(3) 具体的な人材育成の取組み
当社は、もともと株式市場に流動性を供給するための貸借取引制度の運営を使命として長い業歴を経ている。貸借取引も、証券会社を相手方とする、株式を担保とした資金の貸付や、資金を担保とした株式の貸付であり、広義のセキュリティファイナンスの一つである。こうした業務に長年携わりノウハウを蓄積してきた当社の人材には、セキュリティファイナンス業務遂行の素地が備わっている。
こうした素地の上に立って、より幅広いセキュリティファイナンス業務を展開していく上では、海外を中心とした取引先の拡充、取引通貨や貸借対象の有価証券の拡充、取引手法の高度化が必要である。そのため、当社では、例えば、PASLA や ISLA といった証券貸借関係の国際的なフォーラムに役職員を数年来継続して派遣しており、参加するフォーラムも、アジアのほか北米、欧州をカバーするものに広げてきている。その過程で、若手職員を中心に、語学習得やより高度な証券・金融業務に関する知識や経験の獲得に向けた意欲が向上し、実際に能力の増強が着実に図られてきている。近年のセキュリティファイナンス業務伸長にはこうした人材力の向上が大きく寄与している。
さらに、当社ではこのところ中途採用者の採用に積極的に取り組んでいる。これを含めた外部の知識・ノウハウの導入をさらに進め、それを核として内部人材にもOJTを通じてそうした知識・ノウハウを広げていく方針である。実際金融機関から社員として中途採用で入社し、部長、執行役員を経験した人材が、2022 年度執行役常務に登用され、2023 年度には執行役専務に昇任する予定となっている。また、こうした人材育成の立案・運用を担当する人事担当の執行役常務を内部人材から起用する予定である。

(4) 指名委員会・取締役会のコミットメント
指名委員会、取締役会としても、当社の人材には自律的な構想力、組織変革力が求められ、そうしたことに裏打ちされる形で企業価値向上が図られることが望ましいとの問題意識をもって活発に議論している。
具体的には、第7次中期経営計画における人材育成に関し、指名委員会において、堅実に業務を進める人材と、新規業務への対応を含め主体的・能動的に環境変化に対応していける人材の双方を、ビジネスラインに対応して育成していく必要性、またそれらの総合的なバランスをとっていく必要性などについて社外取締役間で議論し執行側に問題提起した。こうした問題提起は、中期経営計画や、これに基づいて近々策定・公表予定の人材戦略に反映されている。
また、2022 年 11 月の統合報告書の発刊に先立つ草案段階で、非財務情報とりわけ人的資本についての考え方の開示をより充実させる必要があるとの意見が社外取締役から出されている。本公表資料の作成も、そうした問題意識に沿って行ったものであり、今後、2023 年度版以降の統合報告書にも織り込んでいく予定である。

以上のとおり、当社の企業価値向上とそれを支える経営陣を含む人材育成による企業体としての持続性の向上に向けた取組みについてまとめてきましたが、当社としては、今後とも一層こうした課題に積極的に取組み、コーポレートガバナンス強化とそれを通じた中長期的な企業価値の向上を目指していくこととしています。関係の皆様のご理解とご支援をお願い申し上げます。

以 上